生産技術 PRODUCTION TECHNOLOGY

事例② 閉塞緩和対策

コンパクトフローは、流路幅がμm~mmのミキサーや配管を利用し、高い混合機能や高速熱交換といった特徴がある一方で、固形物による流路閉塞が起こりやすいといったデメリットも有しています。固形物としては、生成物の溶解度不足であることが多く、溶液中の濃度や温度による対応が求められます。

事例①に示したリチオ化反応の場合、原料のn-BuLiと他の原料中の水分が反応して、LiOHが副生します。リチオ化反応で多用されるTHFにLiOHはほとんど溶けないため、原料中の水分が多いと流路閉塞が多発し、安定に運転できないことが予想されます(グラフ1)。

グラフ1 THF水溶液中のLiOH溶解度データ
(参考:電気化学, 40, No.9, 1972,
661-665)

コンパクトフロー×リチオ化反応で流路閉塞が起こりやすい場所は、ミキサーの合流直後であることを確認しています。実際に、Y字型のガラス製ミキサーにn-BuLiとTHF(任意の水分量)を送液し、LiOHの発生の様子をモニタリングしたところ、合流直後にLiOHが塩として流路内壁に付着していく様子が確認されました(図1)。

図1 Y字型ガラス製ミキサーにおけるLiOH発生の様子
(左)LiOH発生前、(中)LiOH発生開始、(右)LiOH発生後

また、プロセスデータより流路閉塞に至るまでのメカニズムは以下のように考えられます。
ミキサー直後を中心にLiOHが流路内壁に付着し、徐々に堆積していきます。途中、LiOHが塊となって脱離することもありますが、反応運転中に完全にクリアになることはありません。
堆積が進んで完全に流路を塞ぐ、もしくは上流側から塊が流れてきて、狭いところでブリッジングして閉塞することにより、流路閉塞が起こると考えられます(図2)。

図2 コンパクトフロー×リチオ化反応時の流路閉塞
メカニズム案

この流路閉塞に対して、種々検討した結果、高精度二重管ノズルミキサーを採用することにより、流路閉塞に至る時間を遅延できることを確認しました(グラフ2)。
高精度二重管ノズルミキサーは、混合前後の渦、偏流をなるべく減らし、2つの液の界面が流路内壁にすぐに接触しないように設計・開発しました。

グラフ2 任意水分混入時におけるフローリチオ化の運転可能時間
(実線:高精度二重管ノズルミキサー、破線:T字ミキサー)