生産技術 PRODUCTION TECHNOLOGY

コンパクトフロー

バッチ反応器

  • 濃度・温度ムラ⇒不純物発生
  • 安全性⇒暴走反応リスク
  • スケールアップ⇒経験則

コンパクトフロー

  • 高い混合性能、高速熱交換⇒不純物発生を抑制
  • ⇒反応場の微小化によるリスク低減
  • ⇒ナンバリングアップ
     イコーリングアップ等で比較的容易

コンパクトフローとは、内径数十μm~数mmの微小流路とマイクロミキサーを利用する連続型のフロー反応装置・手法であり、マイクロリアクター、フロー合成とも言われております。
その特徴として、高い混合性能、高速熱交換、滞留時間の厳密な制御、界面制御、危険な反応のリスク低減などが挙げられます。また、従来のバッチ型反応器で行われてきたスケールアップに関して、コンパクトフローではナンバリングアップやイコーリングアップといった手法を用いることで、容易に生産能力の増強が可能です。

JNCでは、このコンパクトフローに関する技術導入・開発を通して、生産技術力の強化を行ってきました。
これまでに検討した事例の一部を紹介します。

事例① 低温リチオ化反応

リチオ化反応は、大きな発熱を伴う反応であり、また中間体のリチオ化体が不安定な場合が多く、これまでのバッチ型反応器では安全のために必要以上に冷却しています。一方で、コンパクトフローの高速熱交換などの特徴により、過度の冷却の必要性がなくなります。一例として、有機半導体用の原料製造検討にて、バッチ型反応器では-80℃に冷却している反応をコンパクトフローで行うことにより、室温付近でも反応が収率良く実施可能であることを確認しています。

事例② 閉塞緩和対策

コンパクトフローは、流路幅がμm~mmのミキサーや配管を利用し、高い混合機能や高速熱交換といった特徴がある一方で、固形物による流路閉塞が起こりやすいといったデメリットも有しています。固形物としては、生成物の溶解度不足であることが多く、溶液中の濃度や温度による対応が求められます。事例①に示したリチオ化反応の場合、LiOHが固形物として副生しますが、有機溶媒に難溶であるため、溶解度以外のアプローチをする必要があります。
JNCでは高精度二重管ノズルミキサーを設計・開発し、フローリチオ化反応の閉塞を緩和させることを達成しました。

事例③ 水素添加反応

水素添加反応は、金属触媒存在下、水素ガス雰囲気にて行われています。金属触媒は高価であることから、その回収・再利用のために不均一固体触媒が用いられることが多く、反応場は気-液-固の三相状態となります。ここでコンパクトフローの高い混合機能を活用することにより、物質移動律速が解消され、迅速な反応を行うことができると考えられています。
その不均一固体触媒として、粒径100~500μmの球状触媒が着目されており、従来の粉末状触媒と遜色ない反応効率を有する一方で、フローで課題となる圧力損失は低いという特徴を有しています。JNCでは、クロマトグラフィー充填剤として展開しているセルロース粒子製品を触媒担体として活用することを試み、類似の球状触媒と同程度の触媒活性があることを確認しています。
また、セルロースはカーボンニュートラルな素材であることから、環境に調和したフロー用触媒として注目が集まっています。

JNCコンパクトフロー 発表論文・学会発表

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