生産技術 PRODUCTION TECHNOLOGY

事例① 低温リチオ化反応

開発事例集

低温リチオ化反応(有機半導体用原料)

図1 7-メトキシ-2-ナフトアルデヒドの合成ルート

7-メトキシ-2-ナフトアルデヒドの製造工程検討事例について紹介します。原料の2-ブロモ-7-メトキシナフタレンにn-BuLiを作用させ、ハロゲン-リチウム交換反応により反応中間体のリチオ化体が得られ、リチオ化体にDMFを作用させることで目的の7-メトキシ-2-ナフトアルデヒドが得られます(図1)。

本リチオ化反応は同時に副反応も起こる反応系であるため、バッチ型反応器で行う場合、-80℃の極低温環境下で反応を行わないと満足する収率で目的物を得ることが出来ませんでした。一方で、図2に示すコンパクトフローで本リチオ化反応を行うことで、室温でも目的物を得ることが出来ることを確認しました。この時の反応温度vs収率をグラフ1に示します。

図2 コンパクトフロー装置図

グラフ1 7-メトキシ-2-ナフトアルデヒドのプロセス別の反応収率

図3 Coflore® ACRの外観

図4 Coflore® ACRにおける付加体形成

図5 得られたスラリー液

得られた目的物である7-メトキシ-2-ナフトアルデヒドを有機半導体用原料として用いるには、精製して高純度にする必要があります。本化合物の精製方法として、亜硫酸水素ナトリウムを作用させて付加体を形成、晶析する手法が効果的であることを見出しています。
付加体形成工程は既往のバッチ型反応器で行うことは十分可能です。しかし、医薬業界ではFDAの呼びかけによる連続プロセスの強い推奨や、化学業界においてもその流れに追従する動きがあり、本付加体形成工程に関しても連続プロセス化の検討を行いました。
付加体形成工程は晶析を伴うため、一般的なチューブ等を用いるマイクロフローリアクターでは流路閉塞を起こします。そこで、振動型のマイクロフローリアクターに分類されるAM Technology社のCoflore® ACR(図3)を用いた検討を行いました。

図3 Coflore® ACRの外観

図4 Coflore® ACRにおける付加体形成

Coflore® ACRにおける付加体形成は図4に示した装置構成にて行いました。Coflore® ACRにてリアクターブロック全体を水平方向に振動させ、その衝撃で内部にある振動撹拌子が激しく動き回ることで流路をすりつぶすような動作が発生し、スラリー液などの固体を含む流体でも流路閉塞無く運転できます。

図5 得られたスラリー液

前工程で得られたリチオ化反応液を中和処理した液をリアクターブロック下部より導入し、付加体形成に用いる飽和亜硫酸水素ナトリウムを途中の流路より導入することで付加体形成を行いました。結果として、リアクターブロック上部より目的の付加体が析出したスラリー液を得ることに成功しています(図5)。