記
皆さま、あけましておめでとうございます。今年は戌年です。戌年は、「食べ物に困らない」「道に迷わない」年と言われているようです。JNCも進むべき道に迷わない企業でありたいと思います。私は元旦に、近くの神社にお参りし、JNCの社業発展と各工場の安全運転の祈願を行ってまいりました。本年は中期計画(NC-SCRUMⅡ)の最終年になり極めて重要な年であります。当社にとって飛躍のためのターニングポイントの年となりますようにと、願うばかりであります。
昨年7月のJNC懇話会にて「ミツバチの会議」(2013年築地書館発行)という本を紹介いたしました。トーマス・D・シーリー、という米国のコーネル大学の生物学教授が書いた本です。数人の方から「非常に良かった」というご意見を頂戴いたしました。私もいろいろと考えさせられる本であると思い、この正月の期間、再読いたしました。7月の話を聴いて既に読まれた方もおられるとは思いますが、初めての方が大半であろうと思いますので、再度簡単に紹介することにいたしました。
この本はミツバチの生態の中でもとりわけドラマチックで謎の多い行動の一つ、「分蜂」をテーマとしています。「分蜂」とは、春の終わりごろから初夏にかけて、新しい女王バチが誕生すると、働きバチの大群が生まれた女王バチの母親と約半分の群れを連れて新しい巣作りの為に出発する「巣分かれ」のことです。
この様に言いますと単純に聞こえるかもしれません。しかしながら、分蜂群のハチたちは木の枝に止まった状態で、数日のうちに優れた巣作り場所を探し出さねばならないのです。外敵が侵入しやすい巣とか、あるいは質の悪い巣穴に入った群れは、全滅することも珍しくないので文字通り死活問題です。
良い巣が首尾よく見つかったら今度は、約一万匹もの群れが新居へ向けて迷うことなく一斉に引っ越しをすることになるのです。分蜂群のミツバチ達はいったい、どのようにしてこの難問を解決するのでしょうか。
この先生は、なぜミツバチが常に最高の住処を選び出せるのか。その謎に迫るために、森や草原、海風吹きすさぶ岩だらけの島にまでミツバチを数十年も追って、そうして漸くその謎を解明したのです。
その答えは実に驚くべきものです。分蜂群から飛び立った数百匹の探索バチは、いくつもの候補地を見つけてきます。その中からどれがもっとも理想的な巣作り場所であるか、議論によって決定する。しかもその議論は、全ての提案が平等に検討され、探索バチは周囲に流されることなく独自の判断で候補地を評価し、最終的には高い確率でもっとも優れた案にメンバーの合意がまとまるという、人間顔負けの極めて民主的かつ合理的なプロセスであるということです。
一匹、一匹の能力は限られているけれども、ミツバチは極めて合理的なシステムで高い集団的知能を発揮し、複雑で難解な問題に対して的確な判断を下すということでした。要約致しますと
1) 多様な選択肢を明らかにする。
2) その選択肢について情報を自由に述べる。
3) 最良の選択肢を選ぶために情報を集約する。
4) 探索バチはこの全てを、リーダー(女王バチ)による指示なしで行う。
集団意思決定にとっての落とし穴、即ち支配的な指導者が特定の結論を主張し、集団が選択肢を幅広く・深く見ることを妨げることを避けているのです。我々にとってごく身近な昆虫であるはずのミツバチですが、今述べました意外な生態を持っていることに驚くばかりです。
そしてこの先生は長い研究活動の成果として5つの重要な教訓も残しております。
今、この場で5つの教訓を全て紹介する時間がありませんが、この5つの教訓は我々にとっても非常に重要な教訓です。皆さんも興味があれば是非、一読されたら良いかと思います。
新しい年にあたりこの本にある通り、皆で良く議論し今後のJNCの方針を決めていければと思います。
以上