セルファインTMGCL-2000HF
ゲルろ過クロマトグラフィーはタンパク質等の精製対象物質を分子量の違いで分離する分離モードです。 原理上、粒子径を小さくして分離性能を向上させる必要があるため、高流速で操作できなかったり、 大型カラムで使用できなかったり問題も多い分離モードです。 このようなゲルろ過クロマトグラフィーの特長はプロセス設計でのボトルネック工程になります。
セルファインGCL-2000HFはこのボトルネックを解消するために開発されました。真球状の架橋セルロース粒子をベースとしていますので、 物理的強度が高く、高流速で操作できますので産業スケールで使用することができます。またタンパク質分離に最適化された細孔サイズを有していますので、 優れた分離性能を発揮します。
特徴Features
- 真球状のセルロース粒子
- セルロース特融の優れた機械強度を持ちます
- 多糖類に特徴的な親水性を保持していますので、非特異的吸着が少ない特徴を持ちます
- タンパク質の精製に最適な細孔サイズを持ちます
- 幅広い分子量のタンパク質の精製に適用可能です
- 膨潤させた状態で提供しているため、膨潤操作は不要です
- セルロースベースの構造による優れた化学安定性が高い特徴を持ちます
- オートクレーブによる滅菌が可能です
ベネフィットBenefit
- 大型カラムでも高流速で使用できます
- 非特異的吸着が低く、優れた回収性を示します
- タンパク質の分離に優れた細孔サイズを保有しています
- 使用前に膨潤させる必要がありません
- 一般的な塩類、界面活性剤、変性剤、有機溶媒に耐性があります
- パイロジェンの除去が可能です
- オートクレーブ滅菌が可能です
特徴 | |
---|---|
ベース担体 | 架橋セルロース粒子 |
粒子形状 | 真球状 |
粒径 | ca. 40-130 μm |
化学安定性 | 多くの塩類、界面活性剤、酸アルカリに耐性を持ちます。例えば8M urea、6M guanidine / HCL, 0.1M HCL、0.5M NaOHなどに耐性があります。 |
機械的強度 | ペリスタティックポンプやマグネットスターラーで撹拌しても粒子は崩壊しません。 |
粒子形状の変化 | イオン強度を変化させた際の粒子形状の変化は 3 %以下で安定した形状を保持します。 |
オートクレーブ | 繰り返し使用可能です。 |
保存液 | 20 %エタノール水溶液 |
タンパク質の分離特性Range of Fractionalization
セルファインGCL-2000HFは幅広い分子量分画のタンパク質を分離することができます。図1および表1ではGCL-2000HFの排除限界分子量を測定した結果を示します。
タンパク質 | 分子量 Da | Kav |
---|---|---|
チログロブリン | 660,000 | 0.00 |
ヒトガンマグロブリン | 155,000 | 0.45 |
BSA | 66,000 | 0.52 |
キモトリプシノーゲンA | 25,700 | 0.62 |
α-キモトリプシン | 25,200 | 0.62 |
ミオグロビン | 17,000 | 0.63 |
リゾチーム | 14,300 | 0.70 |
リボヌクレアーゼA | 13,700 | 0.70 |
バシトラシン | 1,400 | 0.91 |
図1 異なるタンパク質を持ちたKav測定
異なる分子量のタンパク質を、カラムに充填したセルファインGCL-2000HFにロードした。カラムから溶出してくる液量を基にKavを測定した。

セルファインGCL-2000HFは幅広い分子量分画のタンパク質を分離することができます。セルファインGCL-2000HFの排除限界分子量を測定した結果を示します(図1,表1)。セルファインGCL-2000HFは極めて大きい細孔を持つセルロース粒子に、独自の架橋技術を施すことで、近い分子量を持つタンパク質を効率的に分離することができるように設計されています。このため分子量17,000 Daのミオグロビンと分子量14,300 Daのリゾチームの様に分子量が近いタンパク質であっても、Kav値は異なりますので分離が可能となります。検量線を引くと、360,000 Daが排除限界分子量となります。
流速特性Pressure Flow Curves
セルファインGCL-2000HFは独自の架橋技術によって優れた物理的強度を持ちます。このため大型カラムでの使用が可能で、バイオ医薬品の製造にも使用されています。線速と圧力損失の関係を示します(図2)。市販のゲルろ過クロマトグラフィー担体と比較して極めて良好な流速特性を示します。

内径2.2cm×20cmのカラムにクロマトグラフィー担体を充填し、24℃に調整された純水を一定圧力で通液した時の流量を測定した。
タンパク質の回収率Protein Recovery
Protein | % Recovery |
---|---|
Catalase | 100 |
lgG | 100 |
Aldolase | 100 |
Serum Albumin | 100 |
Lactoglobulin | 100 |
Ribonuclease | 100 |
Cytochrome C | 100 |
Lysozyme | 100 |
Chymotrypsinogen A | 99 |
Myoglobin | 97 |
優れた安定性(加速試験)Stability
セルファインGCL-2000HFは物質として極めて安定なセルロース粒子を架橋したゲルろ過クロマトグラフィー担体です。40℃の温度条件で、20%エタノール保存液中で保管した後、細孔サイズを測定しました(図3)。6カ月後の状態でも安定した細孔サイズを維持しています。

セルロースは熱に極めて安定な多糖類です。クロマトグラフィー担体として利用されているアガロースはセルロースと同じ多糖類のため、水酸基を多く持ちます。このためセルロースと同様に非特異的な吸着が少ない特徴があります。一方でアガロースは高温の水では容易に溶解されます。このためアガロースは熱に弱いという欠点があります。セルロースは水酸基を持つ多糖類でありながら、セルロース同士が結晶構造をとる結果、物理的強度が高くなるというアガロースに無い極めて優れた特徴を有しています。
優れた安定性(保存試験)Stability
セルファインGCL-2000HFを30℃の温度で、20%エタノール保存液中で保存し、その後の細孔径サイズの経時変化を調べました(図4)。長期間にわたって優れた安定性を示すことが判ります。

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