COLUMN
微生物の増殖を抑制するには
微生物増殖の3要素
微生物は温度・水分・栄養分の3条件の全てが最適な状況となると爆発的に増殖します。これら条件をコントロールすることが、微生物の増殖を抑制する上で重要です。食品はこれら3条件がそろっており、適切に保存しないと微生物増殖によって食中毒が発生する恐れがあります。
冷蔵や冷凍での保存
それぞれの微生物で増殖に適した温度があり、20~50℃といわれています。これを発育至適温度と言います。このため5℃以下の低温で保存することで、増殖を抑制することができます。 調理後の食品を室温で長く放置すると、この時点で微生物が増殖しますので、食品の温度が下がったら早めに冷蔵庫で保存してください。ただし、一部の微生物(リステリア・モノサイトゲネス等)は低温でも増殖することができます。
加熱による調理
微生物は加熱に弱いので、調理時に加熱することで、食品中の微生物数を低減できます。食品表面だけでなく内部までしっかり加熱する必要があります。食材中心部が75℃で1分以上加熱されていれば、微生物による食中毒は防げるとされています。 ただし、ウェルシュ菌は耐熱性のある芽胞を作るため、加熱では殺菌できません。さらに、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌の作り出す毒素は熱に強いため、加熱で無毒化できません。食品の加熱は重要ですが、「加熱すれば食中毒の恐れはない」という訳ではないことに注意しましょう。
調理前の手洗い
我々の手には皮膚常在菌を含めて多くの微生物が存在しています。これらの微生物は食品に移ることで爆発的に増殖します。また生肉に触れた手で皿に触ると、微生物が食品に移ります。調理前にはしっかり手洗いして衛生管理することが重要です。
指の間、指先、手首に至るまでしっかり洗いましょう。
適切な手洗いタイミングの例
・調理の前
・生肉、魚、卵などを触った後
・盛り付けの前
・食事の前
・トイレやおむつ交換の後
・外出先から帰ってきたとき
・動物に触れた後
・ゴミを処理した後
調理器具の管理
包丁、まな板、弁当箱に食品が残存したまま放置すると、増殖した微生物が調理時に移ります。生肉を調理した包丁やまな板で、そのまま刺身を作ると微生物が移ります。まな板は濡れたままにしておくと、微生物増殖の温床になります。調理器具はすぐに洗浄し乾燥するようにしましょう。 シンクを汚れたままにしておくと微生物が増殖し、蛇口から流した水が飛び跳ねて台所を汚染します。食品に触れる器具だけでなく、台所回りの衛生管理をすることが重要です。 衛生管理としてアルコール消毒は有効な手段の1つですが、水気が多く残っている場所ではアルコールが薄まり、十分な効果を得られない場合があります。ポリリジンを含むアルコール製剤を使用すると、シンク周りのような水気の多い場所でもしっかりと抗菌効果を得ることができます。 ポリリジンとアルコールを組み合わせた消毒剤が各社より販売されております。
食品工場では
工場で製造される食品は消費までに時間がかかるので、微生物が増殖しないようにより一層注意する必要があります。手洗いから保存に至るまでの教育の実施やマニュアルを設け、作業者による衛生管理の差が無いようにしましょう。 さらに作業者からの混入を防ぐために、マスク、手袋、作業服、フードを着用することは有効です。また製造した食品の微生物検査や、定期的な製造機械の拭き取り検査をすることで、微生物の管理をすることが食中毒事件予防に重要です。 弊社では微生物数の測定に使用できるシート培地「MC-Media Pad」を取り扱っております。
飲食店では
手洗い、食材保管、調理方法、器具洗浄、厨房清掃を適切にマニュアル化し、作業者を教育することが重要です。例えば生肉を扱ったまな板は、洗浄不十分のままにサラダを扱うと生肉の微生物がサラダに移ります。 教育を徹底することで、このような事例による食中毒は防ぐことができます。弊社のシート培地「MC-Media Pad」は、器具に付着している微生物数の測定に役立ちます。
保存料や日持ち向上剤の使用
微生物の発育を抑制する食品保存料や日持ち向上剤は、食中毒を予防する上で有効です。ただし保存料や日持ち向上剤を添加すれば、どんな状況でも微生物の増殖を完全に抑制できるわけではありません。 調理時の衛生管理や低温での保管が基本であり、これらの物質はこれを補佐するものです。低温での保管が困難な場合は、食品保存料や日持ち向上剤の使用は効果的です。
食品等事業者は、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理に取り組むことが義務付けられております。衛生管理を徹底し、保存料を適切に使用することで、より安定した保存効果が期待できます。