COLUMN
食品保存料とは
食品添加物と食品保存料
食品添加物とは、食品の製造過程または、食品の加工・保存の目的で使用される保存料・甘味料・着色料・香料などの総称です。保存料は食品添加物の一つであり、他には甘味料、着色料、酸化防止剤、増粘剤等があります。
代表的な保存料は、ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸、ナイシン、ポリリジンが挙げられます。ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸は化学的な合成で製造されますが、ナイシンやポリリジンは微生物の発酵を利用して製造されます。
保存料と日持ち向上剤の違い
食品の腐敗や変敗を防ぐ目的で使用される食品添加物には、「保存料」と「日持向上剤」があります。
・保存料
微生物の増殖による食品の腐敗や変敗を防止し、食品の保存性を高める目的で使用されます。食品への添加物表示は物質名と用途名を併記する必要があります。
・日持向上剤
食品衛生法にて定められた用語ではなく、日持ち向上効果を有する食品添加物を総称して呼んでいるものです。食品の保存性を高める目的で使用されますが、保存料より腐敗や変敗を防ぐ効果が弱く、短期間の食品保存性改善に留まります。
保存効果を高めるためには添加量を増やす必要があり、保存料と比べて食品の風味に影響を与えてしまうことがあります。表示は物質名表示のみで構いません。酢酸ナトリウム、グリシン、エタノール、リゾチーム等が挙げられます。
食品添加物とSDGs
安全性が認められていない食品添加物は、発がん性物質が生成されたり、染色体異常を起こす原因になったりと、健康的な生活を妨げる可能性があります。
一方で安全性が認められている食品添加物は、豊かで安全な食生活に貢献し、SDGs(持続可能な社会)に役立ちます。
例えば、保存料や酸化防止剤などはおいしく長持ちさせるために必要なもので、食品ロスの対策になっていますし、介護食や離乳食に使われる増粘剤や、栄養の補助に使われるビタミンやミネラルなどの強化剤は健康維持にも繋がっています。
食料自給率が低く、多くの食べ物を輸入に頼る日本において、フードロスは解決が急がれる問題です。
フードロス削減に対する保存料の有効性
「食品ロスの削減の推進に関する法律案」が国会に提出され、「食品ロスの削減の推進に関する法律」(令和元年法律第19号。以下「食品ロス削減推進法」という。)が成立しており、フードロス削減は重要な課題となっています。
日本国内の食品ロス量は年間 643万トン(2016年度推計)と推計されており、国連世界食糧計画(WFP)による 2018年の食料援助量約 390万トンの1.6倍に相当します。そのうち、事業系食品ロス量が 352万トン、家庭系食品ロス量が 291万トンである。
事業系食品ロスの業種別の内訳をみると、食品製造業と外食産業がそれぞれ約4割を占めている。主な発生要因としては、食品製造・卸売・小売業では「規格外品」、「返品」、「売れ残り」、外食産業では「作りすぎ」、「食べ残し」等が挙げられる。
家庭系食品ロスの内訳をみると、「食べ残し」、「過剰除去」、「直接廃棄」となっている。
消費者庁「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」より
保存料は、有害な微生物の増殖を抑制することで、食品の腐敗を遅らせることができます。これにより、食品を製造してから消費するまでの時間を延長することで、過剰な製造や期限切れによる廃棄を抑制してフードロス削減に貢献します。
法律による食品添加物の規制
厚生労働省は、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用を認めています。
このため、科学的検証に基づき安全性と有用性が確認されており、食品添加物の一つである食品保存料を使用した食品に関して、不安を抱く必要はありません。
・食品衛生法
食品添加物は、科学的な評価に基づいて安全性が確認されています。食品ごとの使用基準は食品衛生法で規制されており、人が一生毎日摂取し続けても健康に影響しない量を元に設定されています。
食品衛生法上では、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食添加物に分類され、ポリリジンは既存添加物に該当します。
・食品表示法
食品添加物を食品に使用した場合は、原則全て表示しなければなりません。表示は、物質名での表記が原則ですが、分かりやすくするための簡略名も認められています。また、8種類の用途においては、使用する用途名も併記する必要があります。ポリリジンを例に挙げると、「保存料(ポリリジン)」となります。
食品添加物の表示が免除される場合
以下のいずれかに該当する場合、添加物表示が免除できることがあります。
・加工助剤
食品の加工の際に使用されるが、(1)完成前に除去されるもの、(2)その食品に通常含まれる成分に変えられ、その量を明らかに増加されるものではないもの、(3)食品に含まれる量が少なく、その成分による影響を食品に及ぼさない場合は、表示を省略できます。
・キャリーオーバー
原材料の加工の際に使用されるが、次にその原材料を用いて製造される食品には使用されず、その食品中には原材料から持ち越された添加物が、効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていない場合は、表示を省略できます。
・栄養強化剤
栄養強化の目的で使用されるビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類については、表示を省略できます。ただし、特別用途食品及び機能性表示食品は除きます。
食品添加物の不使用表示について
「着色料無添加」、「保存料不使用」といった添加物の無添加・不使用表示をする場合は、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」に沿って消費者に誤認等を与えないようにする必要があります。 例えば包装に無添加と書かれていても、様々な食品添加物のうちの何が無添加なのか分かりません。着色料を使用していないのであれば、「着色料無添加」と記載する必要があります。 また保存料は不使用であっても、日持ち向上目的で酸化防止剤を添加している場合、保存料不使用と表示すると、実際のものより優良または有利であると消費者に誤認を与える恐れがあります。決して無添加表示が一律禁止になるのではなく、消費者にとって分かりやすい表示にすることが目的です。
海外の食品添加物規制
加工食品輸出における食品添加物の留意点として、国ごとに食品添加物の法規制が異なることが挙げられます。国によっては、国際食品規格(コーデックス規格)を準用していますが、多くの国では独自の法規制を制定しています。 従って、規制対象、物質、用途や機能、使用基準、規格が国ごとに違いますので、輸出先国の法規制に適合する必要があります。もし輸出先国の法規制に適合しない場合は、輸出先国で使用できる原材料で再設計する必要があります。まずは輸出先国の法規制を確認することが重要です。