PROJECT STORY プロジェクトストーリー

有機ELという資産を次の世代へ。 若手と築いた「100 年後も残る仕事」

有機EL

次世代ディスプレイの世界標準をつくる。
有機ELの可能性に賭けた不屈の挑戦。

機能材料の分野で世界を常にリードし、液晶組成物をはじめとする革新的な技術や製品を数多く手がけているJNC。特に有機EL材料は、スマートフォンやテレビに使用され、今や世界中で当たり前のディスプレイ素材として知られている。しかし、この地位を築くまでには、20年以上におよぶ研究開発と挑戦の歴史があった。ここでは、その背後にあった努力と挑戦の足跡を振り返る。

プロジェクトメンバー

  • Iさん

    SK materials jnc R&D Center
    Chief Technical Officer

液晶全盛期に挑んだ有機 EL 開発。

Q 2000年代の有機ELは、市場でどのような位置づけだったのでしょうか。
2000年代の初頭、日本は液晶で世界をリードしていて、その勢いで有機ELでもトップを目指そうとしていました。大手家電メーカーや材料メーカーがこぞって開発に取り組んで、明るい未来が期待されていました。

しかし、この技術には大きな壁がありました。有機ELはナノレベルでの成膜技術が必要なことから、少しでも生産工程に不備が発生すると、画素が欠けたり色がバラついたりする製造面での課題が浮き彫りになりました。さらにこれらの問題に加えて、液晶の性能が飛躍的に向上したのに加え、価格も大幅に下がったことで、有機ELのそもそもの優位性が失われていったのです。この結果、多くのメーカーが有機EL事業から撤退。2000年代 後半には日本の有機EL産業は「冬の時代」を迎えることになりました。
有機EL
生田 生田

世界を変えた青色発光材料の
ブレークスルー。

Q 有機ELよりも液晶のほうが
優れていたということでしょうか。
有機EL は液晶よりも原理的にコントラスト比や視野角、応答性に優れている反面、発光の色純度が低いという問題を抱えていました。色純度が低いと、再現できない色ができてしまい画質が落ちます。光学フィルターで発光スペクトルから不要な色を除去して色純度をアップさせる方法もありますが、その場合、ディスプレイの輝度や電力効率が低くなってしまうばかりか、有機ELの液晶に対するメリットを目減りさせてしまうことになります。従って業界的には色純度が高い発光材料――とりわけ青色発光の開発が急務でした。当時、私たちは関西学院大学理工学部の畠山琢次教授(現在は京都大学)とこの青色の克服をするために共同研究をしていました。そして2016年、世界最高レベルの色純度を持ちながら高い発光効率を有する青色蛍光材料の開発に成功。色の再現性を向上させるばかりか、消費電力の大幅な低減させる効果を有していたため、この技術をきっかけに、有機ELはディスプレイとしての応用範囲を広げ、現在の世界的な普及につながりました。
有機EL

国境を越えた挑戦―世界を変える共創へ。

Q 青色発光材料の開発後、どんな展開をされたのでしょうか。
私たちの開発した青色発光材料によって、有機ELの大きな課題を解決することができました。しかし、リーマン・ショックを契機に日本の有機EL産業は韓国に大きく後れをとってしまいました。韓国のディスプレイメーカーの成長は目覚ましく、世界を席巻しています。一方で、有機EL材料の基礎研究は、日本が世界をリードしていました。そこで、お客様の声を直接聞き、それを製品開発に活かすために、韓国への拠点を検討していました。その矢先、韓国のSKマテリアルズも私たちと同様に材料開発に力を入れた事業展開を目指していることがわかり、共同で新しい会社を設立することになったのです。これからは、「精査の日本」と「スピードの韓国」がタッグを組んだ合弁会社で、世界の市場をねらっていこうと考えています。
有機EL
有機EL

失敗を恐れずに挑戦する風土だから、
大きく成長できる。

Q 最後に、就職を検討している学生さんにメッセージがあればお願いします。
この事業は、電気、物理、化学といった、さまざまなパズルのピースを組み合わせて完成させるようなものです。電気の専門家だけでは、物理の知識が足りません。物理の専門家だけでは、化学の知識が足りません。つまり、有機EL材料を作るためには、化学者、電気のエンジニア、プロセスエンジニアなど、たくさんの専門家が一丸となって複合的に取り組む必要があります。JNCでは、それぞれの分野でトップレベルの研究者が集まって世界に挑戦しています。新しいことに挑んで、失敗を恐れない風土が根づいています。なぜなら、失敗から学ぶことが次の成功につながると信じているからです。みなさんも、ぜひJNCで一緒に挑戦して、未来を切り開いていきましょう。

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