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水力発電という資産を次の世代へ。 若手と築いた「100 年後も残る仕事」

水力発電

水力発電という資産を次の世代へ。
若手と築いた「100 年後も残る仕事」。

日本の化学産業を牽引してきたJNC株式会社。その100年を超える革新の歴史の中で、一見ユニークに見えるのが電力事業だ。
「化学の会社がなぜ電力を?」と思うかもしれない。しかし、実はこの電力事業こそがJNCの始まりを象徴し、そのチャレンジ精神を体現する存在にほかならない。その誕生の歴史をたどり、JNCの持続可能な未来への挑戦を探っていく。

プロジェクトメンバー

  • Uさん

    電力事業部 事業部長

自社発電から社会貢献へ ―
再生可能エネルギーへの進化。

Q なぜ水力発電をしているのか、その経緯を教えてください。
JNCの創業者である野口遵は「電気化学工業の父」として知られ、1906年の創業当初から、自社工場を自給エネルギーで稼働させるビジョンを持っていました。1909年には鹿児島・曾木の滝に大規模な水力発電所を完成させ、1914年には白川発電所を建設するなど、JNCは水力発電を通じて自社工場を稼働させる体制を整えていきました。現在では熊本県に11か所、宮崎県と鹿児島県に各1か所の合計13か所の水力発電所を運営し、水俣製造所の電力をまかなっています。

しかし、時代とともに工場の生産量や電力需要が変化し、多くの発電量が余剰電力となりました。2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーが注目されはじめ、JNCの水力発電所も新たな価値を見出されるようになりました。この流れを受けて、2013年に電力事業部を設立。社会に貢献するための電力供給体制を整えていきました。
宇都
宇都 宇都

設備の老朽化、そして自然災害との闘い。

Q 電力事業部を立ち上げたとき、
どんな課題がありましたか。
電力事業部がまず取り組んだのは、13か所におよぶ水力発電所のリニューアルです。最も古い発電所は竣工後100年以上、新しいものでも竣工後50年を超えており、設備の大規模な改修が必要でした。また、2012年からスタートした再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)に対応するため、水車や発電機などの主要設備の効率化が急務でした。

しかし、プロジェクトの進行中に自然災害が大きな試練となって立ちはだかったのです。2016年の熊本地震と豪雨災害、2020年7月熊本南部豪雨、さらに2022年の台風による浸水被害など、幾度となく災害に見舞われました。

特に2022年の台風では、完成間近の発電所が浸水して、地下の水車設備や制御盤が被害を受けました。制御盤を新たに制作した場合の納期が約20か月と長期間にわたるため、専門業者の協力を得て水没した機器を洗浄整備し、何とか復旧に成功。結果的に、予定より1年遅れて2024年3月に発電所の運転を再開させました。
水力発電

機械、電気、土木の各分野から
専門家を集めて特別チームを編成。

Q プロジェクトの中で、印象に残っていることは
ありますか。
水力発電所のリニューアル工事には、意識的に多くの若手社員に参加してもらうようにしました。このプロジェクトには、機械系、電気系、土木系など、さまざまな技術者が関わっていて、一人でも多くの人材に「100年後も残る仕事」を体験させたいと思ったのです。この仕事が、一人ひとりの技術者にとってどれだけ貴重な経験となり財産になるか、私たちは分かっています。また、若手社員には専門分野を越えた業務も積極的に任せました。例えば土木出身の技術者に地主の方と交渉をしてもらうなど、いわば専門外の仕事も積極的に担ってもらいました。

しかし、ありがたいことに、誰もがそういった働き方を楽しんでくれて、面白いとも言ってくれました。私はこの人材こそが財産だと誇りに思っています。
水力発電
水力発電

今を築くことで、
次の100年を支えていく。

Q 今後の展望と、就職を考えている学生さんにメッセージがあれば。
今後、電力事業部は生産年齢人口の減少による労働力不足及び人材不足への対応として、接続可能な設備管理体制の構築が急務であるととらえ、スマート保安の実現に向けて、AI、IoT、ドローン、ロボティクスなどの最新技術の導入を計画しています。これにより、安全と適切な労働環境を確保し、また発電所の高度で効率的な運用にも取り組んでまいります。私たち電力事業部の挑戦は、単なる事業拡大ではありません。それは、これまでの100年の歴史を礎に、次の100年を築く壮大なプロジェクトです。「持続可能な未来は、誰かがつくってくれるものではない」という想いを胸に、既存の枠にとらわれない柔軟な発想と、未来を切り拓く情熱を持った人たちの挑戦を待っています。共に次の新たな100年をつくっていきましょう。

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